私がまだ大学生だったころ。
友達と飲んでから深夜に帰宅すると、
見知らぬ番号から着信があった。
出てみると、同世代と思われる男性であった。
相手は名乗りもせずに、
私の名前を言ってきた。
私の家も知っているからこれから行く、という。
知り合いかと思ったが、聞き覚えもない声だ。
それに少々脅迫めいている。
少し怖い気がしたが、
こちらも酔って気が大きくなっているのもあって
「来れるなら来てみろ、待ってるからな。」
と応戦した。
なんやかんや20分ほど話したのは、こちらもしつこく
誰なのか聞き出そうと電話を切らなかったからだ。
相手も一切要件を言わないので何のための電話なのかわからない。
私があまりにしつこく誰なのか聞くもので
最後に、相手も根負けして根を上げた。
とにかく私は、誰なのか、そしてなぜ私の番号と名前を
知っているのか聞きたかったのだ。(当然だ)
電話の男はついに名前を言った。
「キムラだよ」
下の名前を聞くと男は答えた
「タクヤ」
え?
私は言葉を失った。
これはイタズラ電話に違いない。
そう確信して、私は無言で電話を切った。
結局キムラタクヤと名乗る電話の男は家には来ず、
それ以来、その番号から電話が来ることはなかった。
あれはもしかして、本当の”キムタク”だったのだろうか?