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「超弦理論」は私たちの生活をどう変えるのか?

超弦理論は、現在の物理学の根幹である「量子力学」と「一般相対性理論」を統一しようという非常に理論的な枠組みです。もしこの理論が「完成」あるいは「解明」され、観測・実験的にも整合すると確認されたとしても、その成果がすぐに私たちの生活に直接的かつ大きな変化をもたらすかというと、正直なところ短期的にはあまり期待できないと考えられています。
しかし、以下のような観点から、長期的には私たちの生活に何らかの影響を与える可能性があります。


1. 新しい物理現象や技術の基礎理論としての発展

量子重力の解明

  • 超弦理論は「量子重力理論」を成立させる有力な候補です。
  • 重力の量子化やブラックホールの性質などがより深く理解できることで、新しい物理法則の発見や極限状態での物質の振る舞いなど、想像もつかないような理論的革新が起こる可能性があります。
  • これらの新知見が長い目で見れば、超高エネルギー物理実験や宇宙物理学の計測技術向上などに結び付き、やがては新たな工学技術を生み出すかもしれません。

空間や時空構造の新解釈

  • 超弦理論では、通常私たちが認識している3次元空間+時間に加えて、さらに高次元が存在することを想定しています。
  • こうした時空構造の新たな理解は、将来的にワームホールや時空の量子トンネル効果など、SF的なテーマをリアルに研究するきっかけになるかもしれません。
  • 今後、極限的な重力場(ブラックホールなど)を利用した新技術が登場する可能性も、まったく否定はできません。

2. 先端技術への応用の糸口

超弦理論と高エネルギー実験

  • 超弦理論を検証するには、プランクスケール(約10−3510^{-35}10−35メートル)という非常に小さなスケールや超高エネルギー領域を扱わなければなりません。
  • そのために必要な加速器や観測技術の開発は、結果として極めて高度な計測技術や新素材、革新的デバイスを生み出す可能性があります。
  • そうした副産物が、通信技術や医療機器、新エネルギー開発などへ波及することは、歴史的にもよく起こってきたことです(例: インターネットの始まりがCERN関連であったなど)。

量子コンピュータやAIとの関連

  • 超弦理論そのものが、すぐに量子コンピュータやAIの直接的な発展に寄与するわけではありません。
  • しかし、量子コンピュータが高度化し、極限的に複雑な理論や方程式のシミュレーションが可能になることで、超弦理論の解析が進む可能性があります。
  • その結果として、さらなる理論的発見がなされ、最先端技術の開発がブーストされる、という相乗効果は考えられます。

3. 哲学的・文化的影響

宇宙観・世界観の変化

  • 超弦理論の完成は、私たちの「世界観・宇宙観」を大きく変えるかもしれません。
  • 過去、ニュートン力学が確立されたり、相対性理論・量子力学が登場したことで、人類の宇宙観や世界観は大きく刷新されてきました。
  • 新しい世界観は、教育・思想・芸術など、多様な文化や価値観の変革をもたらす可能性があります。

科学技術への信頼と興味の高まり

  • 「この宇宙はどのようにして成り立っているのか?」という根源的な問いにさらに答えが近づくことで、人々の科学への関心が高まり、理工学分野への投資や教育の拡充につながる可能性があります。
  • それにより長期的には、多くの若い世代が科学技術の分野に参入し、新たなイノベーションが起こりやすい社会が形成されるかもしれません。

まとめ

  • 短期的・直接的な生活の変化
    超弦理論が完成しても、すぐさま身近な機器や生活環境が劇的に変わるわけではないと考えられます。
  • 長期的な波及効果・間接効果
    1. 量子重力や高次元の理解など、根源的な物理への理解が進む
    2. 新しい加速器技術・計測技術など、先端技術開発の副産物が期待できる
    3. 宇宙観・世界観の変化に伴う思想的・文化的な進展

超弦理論は、私たちの住む宇宙の仕組みを最も根本的なレベルで捉えようとする挑戦です。その解明は決して「すぐ役に立つ」結果ではないかもしれませんが、長い目で見れば、人類の科学や文明の基盤を揺るぎないものにし、将来の技術革新への大きな一歩となる可能性を秘めています。

  • この記事を書いた人

Daichi

民間、大学、政府で働いていました。データサイエンス・機械学習やブロックチェーン技術を中心に経済、テクノロジーや文学や哲学など様々なジャンルに関して発信しています。

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