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変わることと変わらないことのエネルギー

物事の流動性と現代の変化の速さ

物事は常に流動する。人自体も、人を取り巻く時代や環境も、そして両者の関係性も含めて、絶えず流動的に変化する。近年、時代は激しく変化しているように言われる。特に、コンピューターテクノロジーの発展により、インターネットが普及し、SNSが流行し、さらにはAIによる情報革命が進む現代では、変化が早いこと、早いことを美徳とする風潮さえ感じられる。だが、一度外に目を向けて、例えば人間寿命の統計を鑑みれば、医療の発展により平均的に長寿化の傾向はあるのかもしれないが、大袈裟にいってそれも1.5倍から2倍程度である。すなわち、人間にとって自身の変化速度は大きくは変わらないのだ。

物理学におけるエネルギーと変化

物理学において、変化とエネルギーの関係は深く結びついている。エネルギーは、物質の状態を変えるために必要な力であり、変化を生み出す源である。たとえば、ニュートンの運動の法則によれば、物体は外力が加わらない限り静止または等速直線運動を続ける。つまり、何かが変化するためには、外部からのエネルギーが必要になる。

また、宇宙の変化という視点で見ると、ビッグバン以降、宇宙は絶えず膨張を続けていることが分かっている。さらに、近年の研究では、その膨張速度が時間とともに加速していることが明らかになった。この加速膨張は「ダークエネルギー」と呼ばれる未知のエネルギーの影響によるものと考えられている(Riess et al., 1998; Perlmutter et al., 1999)。これは、宇宙が静的ではなく、常に変化し続けていることを示す重要な事実であり、エネルギーと変化が切り離せない関係にあることを物理学的に裏付けている。

変わらないことにもエネルギーが必要

blue smoke in black background

私はかつて、変わることにはエネルギーが必要で、変わらないことにはエネルギーは必要ないと考えていた。しかし、人生の中で様々な経験をするうちに、実は「変わらないこと」にもエネルギーが求められる場面があることに気づいた。物理学の視点から見ても、変わらない状態を維持するためには、外部からのエネルギーの供給が必要な場合がある。例えば、高い位置にある物体を維持するためには、支える力が必要であり、冷蔵庫が内部を低温に保つには電力が必要である。同じように、社会の中で変わらずにいることは、周囲の圧力や変化の流れに逆らうための精神的・物理的エネルギーを要する

価値観を貫くためのエネルギー

たとえば、社会の流れが急速に変化する中で、自分の価値観や生き方を貫こうとするならば、その立場を守り続けるために強い意志と労力が求められる。時には、周囲の期待や圧力に耐えなければならないこともある。あるいは、人間関係や職場の環境の変化に対して、あえて自分のスタンスを変えずにいることが、逆に大きな挑戦となる場合もある。

さらに、変わらないことが「受動的な選択」ではなく、「能動的な決断」となる場合、その決断を維持するためには強い精神力が必要となる。流れに身を任せて変化する方が簡単な場合もあるが、自分の信念や価値観を守るために変わらずにいることは、それ以上に大きなエネルギーを要するのだ。

変化とエネルギーの最適な使い方

body river surrounded by dress

物理学的視点を人間の生き方に当てはめれば、変わることと変わらないことは、どちらもエネルギーを必要とする行為である。変化には新しい刺激と適応のエネルギーが必要だが、変化を拒むことにもまたエネルギーが求められる。大切なのは、どちらの選択にエネルギーを投じるべきかを見極めることだ。

結局のところ、変わることも変わらないことも、それぞれにエネルギーを必要とする。どちらを選ぶにせよ、その選択が自分にとって意義のあるものであるならば、そのエネルギーは決して無駄にはならないだろう。変化の激しい現代において、自分自身の軸を持ちながら、適切なエネルギーの使い方を模索することが、より充実した人生につながるのではないだろうか。

  • この記事を書いた人

Daichi

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