スーパーで野菜を買うときに、できるだけ口にしても安心な食品を買いたいという方も多いのではないでしょうか。今日は、国が食品の品質について基準を設けて保証する仕組みJASマーク認証について解説します。これを読んでいただければ、どのように国が安全な食品を認証しているかがわかります。また生産者にとってJASマーク認証を取得するメリットもわかります。ぜひ最後まで読んでください。
JASマークの確認方法
店頭やスーパーで商品を購入する際、パッケージに「JASマーク」が表示されているかを確認すると、JAS規格に準拠した商品であることがわかります。特に有機JASマークは、緑色の丸いロゴが特徴で、有機農産物や有機加工食品でよく見かけます。
JASとは、日本農林規格(Japan Agricultural Standards)の略称で、日本における農林水産物や食品の品質を保証するための基準です。JAS規格は、消費者が安心して購入できる製品を提供するために、日本の農林水産省が定めた品質基準を満たした商品に付けられます。
JASマークの役割
JASマークが付いている商品は、一定の品質基準を満たしていることを示しています。たとえば、野菜や果物、加工食品、木材製品など、幅広い分野でJAS規格が設けられており、JASマークを見れば、品質や安全性が国の基準で保証されていることがわかります。
JASのあゆみ
JAS規格には、以下のような歴史があります。
- 一般JAS
- 一般的な農産物や食品の品質や特性を保証するものです。たとえば、乾燥わかめや醤油など、特定の品質基準を満たす商品に対して適用されます。
- 有機JAS
- 化学肥料や農薬を使用せず、環境に配慮した方法で生産された有機農産物や有機加工食品に対する規格です。有機JASマークが付いている商品は、厳しい基準をクリアしていることを示しています。
- 特色JAS、試験方法JAS
- 味や香りなど、一般的な基準以上の特別な品質を持つ商品に対して付与される規格です。たとえば、伝統的な製法で作られた味噌や醤油などが該当します。
有機JASの特徴
有機JASを取得するには、有機農産物に関する厳しい基準をクリアしなければなりません。以下の条件を満たす必要があります。
- 化学肥料や農薬を使用しない
- 有機JAS認証を受けるには、栽培中に化学肥料や合成農薬を使用せず、自然に優しい方法で育てることが求められます。
- 遺伝子組換え技術を使用しない
- 有機農産物は、遺伝子組換え作物ではないことが条件です。
- 土壌の健康を保つ
- 土地の持続可能な利用を重視し、長期的に土壌の健康を維持するための農業方法が求められます。
有機JASの取得方法
有機JASの認証を取得するためには、いくつかのステップがあります。以下の手順で進めていきます。
- 有機農産物の基準に適合する栽培
- まず、農産物を栽培する際に、化学肥料や合成農薬を使用せず、有機JASの基準に従った方法で栽培を行う必要があります。栽培前に、土壌が有機農産物の基準を満たしているかどうかも確認することが重要です。
- 認証機関への申請
- 有機JAS認証を行う認証機関に申請を行います。日本には複数の認証機関があり、農林水産省が認可しています。申請書類を準備し、必要な情報(栽培方法、使用した肥料の種類、栽培記録など)を提出します。
- 審査・検査
- 認証機関による審査が行われ、栽培環境や作業記録が有機JASの基準に適合しているかどうかが確認されます。現地での検査も含まれるため、農場を訪れて実際の状況を確認することが一般的です。
- 認証の取得
- 審査に合格すれば、有機JAS認証が発行されます。その後、製品に有機JASマークを表示することができます。認証は定期的に更新が必要で、基準に適合しているかどうかの再審査が行われます。
有機JASの料金の目安
有機JASの認証を取得する際の費用は、以下のような項目に分かれます。
- 申請料
- 認証機関への申請時に支払う費用です。おおよそ数万円から数十万円の範囲です。
- 審査料(検査料)
- 認証機関による現地検査や書類審査にかかる費用で、これも数万円から十数万円程度が一般的です。農場の規模や製品の種類によって変動することがあります。
- 年会費・更新料
- 認証を維持するためには年会費や更新料が発生します。年会費も数万円から十数万円程度です。
- 追加検査費用
- 更新時や有機JASの基準に違反があった場合の再検査にかかる費用です。
取得費用の目安
有機JASの取得にかかる初期費用は、規模や申請内容により異なりますが、おおよそ20万円から50万円程度になることが多いです。維持費用としては、年会費や更新料が年間10万円から20万円ほどかかるケースが一般的です。取得費用は決して安いものではありませんが、認証機関によってだいぶバラツキがあるので、これから取得を考えている生産者は、お住まいの地域でよく確認してみることをオススメします。
海外の有機農産物認証について
日本の有機JASに対して、海外にもさまざまな有機農産物の認証制度があります。各国や地域で独自の基準が設けられており、輸出入時には認証の互換性が考慮されることもあります。ここでは、代表的な海外の有機農産物認証について紹介します。
1. アメリカの有機認証(USDA Organic)
アメリカでは、農務省(USDA:United States Department of Agriculture)が有機認証を管理しており、その基準は非常に厳しいものです。USDA Organicマークは、以下の条件を満たす農産物や加工食品に付けられます。
- 化学肥料や農薬の不使用
- 最低でも3年間、農薬や化学肥料を使用していない土地で生産されることが求められます。
- 遺伝子組換え作物の不使用
- USDA Organicの基準では、遺伝子組換え技術を使用した作物は認証の対象外です。
- 動物福祉の配慮
- 畜産物の場合は、動物にストレスの少ない環境を提供し、ホルモン剤や抗生物質を使わないことが求められます。
2. 欧州連合(EU)の有機認証(EU Organic)
EUでは、有機農産物の基準が欧州連合全体で統一されており、EU Organicマークを付けることができます。このマークは、EU内で生産された農産物や輸入品に対しても適用されます。
- 化学肥料や農薬の使用制限
- EU Organicは、化学肥料や農薬の使用を制限しており、特定の有機資材を使用することが奨励されています。
- 土壌の持続可能な利用
- 土壌の健康維持や生物多様性の促進を重視し、持続可能な農業方法を推進しています。
- トレーサビリティの確保
- 有機認証を受けた製品は、原材料から製品化に至るまでのプロセスが追跡可能であることが求められます。
3. オーストラリアの有機認証(Australian Certified Organic, ACO)
オーストラリアの有機認証は、Australian Certified Organic(ACO)という団体が提供しています。ACOの基準は、オーストラリアの有機農業規格を満たす厳格なものです。
- 化学物質の使用禁止
- 栽培や加工の過程で、化学物質や合成添加物を使用してはなりません。
- 環境保護の推進
- 環境への影響を最小限に抑える農業方法が奨励され、自然生態系を保護することが求められます。
- 輸出にも対応
- ACO認証を取得している場合、他の国の有機認証とも互換性があることが多く、海外輸出にも有利です。
4. カナダの有機認証(Canada Organic)
カナダの有機認証は、Canada Organicという規格で運営されています。カナダ国内での有機農産物の生産と輸入品の両方を対象としています。
- 化学肥料・農薬の使用制限
- 有機農業の基準として、化学肥料や農薬の使用が大幅に制限されています。
- 遺伝子組換え作物の排除
- カナダの基準でも、遺伝子組換え作物を使用しないことが求められます。
- 国際的な認証との互換性
- カナダの有機認証は、アメリカやEUなどの有機認証との互換性があり、輸出入時の手続きをスムーズにします。
5. その他の国々の有機認証
他にも、インド、韓国、ブラジルなど、世界各国で独自の有機認証基準が設けられています。多くの国で、化学肥料や農薬の使用を制限し、遺伝子組換え技術の使用を禁止するなど、共通した基準が設けられていますが、細かい点での違いがあるため、輸出入を行う際には各国の基準をしっかりと確認することが重要です。
日本の有機JASと海外認証の互換性
日本の有機JAS認証は、いくつかの国や地域の有機認証と互換性があります。たとえば、アメリカのUSDA OrganicやEU Organicとは相互認証の取り決めがあるため、JAS認証を取得した製品はこれらの地域に輸出する際に現地の有機認証を受ける必要がありません。ただし、すべての国との互換性があるわけではないので、事前に確認が必要です。
まとめ
有機農産物の認証は、世界中でさまざまな基準が設けられていますが、基本的な理念は共通しています。それは、化学肥料や農薬を避け、持続可能な農業を推進することです。消費者は、各国の有機認証マークを理解し、製品選びの参考にすることで、より安心して有機製品を利用することができます。また生産者は、日本の有機JAS認証を取得することで、国際市場においても競争力を持つことができます。ぜひ参考にしてみてください!