世間では、4月の新年度の人事異動が出始めている時期ではないでしょうか。
組織における不条理(理不尽、筋が通っていない、納得しがたい状況)は、多くの人々が職場・チームなどで経験する大きなストレス要因のひとつです。
例えば「なぜそのルールがあるのか明確でない」「上司や経営陣の論理的とは思えない指示」「不透明な評価制度」などが、組織の不条理の例として挙げられます。こうした不条理に直面すると、モチベーションの低下やストレス増大につながりやすいため、組織の中で働くうえでうまく対処を考えることが大切です。私の所属する組織においても、自身が不条理に晒されることはもちろん上司や同僚など様々な不条理に耐える事例を数多く目撃してきました。
以下では、組織の不条理に対処するための代表的な方法をいくつか挙げ、そのポイントを解説します。
1. 視点の整理:自分に影響が及ぶ範囲(コントロール可能範囲)を見極める
● コントロール可能なことと不可能なことの区別
組織における不条理は、個人の立場から見るとコントロールできない場合が多いものです。一人では変えられない組織構造や、トップマネジメントが決定した方針に対して、個人が直接的に影響を与えるのは難しい場合もあります。
そこでまずは、自分が「変えられること」「変えられないこと」を切り分け、エネルギーを注ぐべき対象を明確にします。
● コントロール可能な要素に注力
組織内の理不尽さをすべて消そうとすると、時間も精神力も膨大に消費され、結果的に疲弊してしまうことがあります。たとえば、業務手順を少しでも合理化できる余地があるのであればそこに注力する、自分の担当領域を改善するなど、まずは自分に権限や影響力がある部分にフォーカスするとよいでしょう。
2. 情報収集とコミュニケーション
● 不条理に見える背景を探る
一見「なぜこんなルールがあるのか分からない」「なぜこんな指示が出されるのか理解できない」と思うような事柄でも、その背後には別の事情や優先事項があるかもしれません。組織の全体像や意図を知らずに一面的に見ると不条理に映るケースもありえます。
可能であれば上司や同僚との対話や社内文書の確認などを通じて情報を収集し、「なぜそうなっているのか」を理解する努力をしてみるのもひとつの方法です。背景を知るだけでも、気持ちが幾分整理される場合があります。
● 適切な質問・提案を行う
ただ受け身になるのではなく、上司や関係者に疑問点や提案したい点を整理し、明確な質問や意見として伝えることを試みる価値があります。重要なのは、単に不満や文句としてぶつけるのではなく、建設的な姿勢(「この部分はこうしたらよいのでは」「この意図を教えてください」など)でアプローチすることです。
質問や提案を行うことで、組織側の考えや優先順位が判明し、互いの理解のすり合わせが可能になります。
3. サポート・相談先をつくる
● 同僚やチームメンバーとの協力・共感
組織の不条理をひとりで抱え込むと精神的に辛くなりやすいです。同じ組織に属している同僚やチームメンバーと情報共有を行い、ともに理解や対応方法を考えることで、ストレスの軽減や新たな発想が得られることがあります。
ただし、不満の言い合いだけに終始すると職場の雰囲気が悪くなったり、自分自身も余計にネガティブになってしまう可能性があります。意見交換や愚痴の共有も時には必要ですが、それがゴールにならないように注意しつつ、建設的に支え合う姿勢を心がけましょう。
● 社内外の相談窓口や専門家への相談
場合によっては、社内の人事部門や産業医、メンター制度などの正式な窓口を利用するのも一手です。もし組織の不条理があまりにも度が過ぎており、ハラスメントに近い状態であったり、心身に影響が出るレベルであれば、外部の労働相談所や労働基準監督署、専門カウンセラーや医師などに相談して、法的・制度的な保護を得ることも大事です。
4. 自分のキャリアビジョンを見直す・行動を起こす
● 不条理を前提としたキャリアデザイン
不条理な組織で働くのが長期的に自分の成長や健康に悪影響だと感じる場合には、転職や部署異動など大きな決断を検討することも必要です。
「どんな環境で、どんな仕事をしていたいのか」という長期的な視点を持つことで、今の組織で理不尽に耐えてスキルを身につけることが将来的に役に立つのか、それとも別の環境に移ったほうが得策なのかを考えるきっかけになります。
● 小さなアクションから始める
大きく環境を変えることはハードルが高い場合も多いです。そうした場合は、日々の習慣や学習の見直し、ネットワーキングの拡大(SNSやコミュニティ参加)、外部セミナーへ参加するなど、将来の選択肢を広げる活動を少しずつ進めるのも有効です。
組織内での不条理への対処策が見つからないとしても、外部に目を向け、新しい知識や人脈を得ることは自分自身の成長と安心感につながります。
5. 心理的ケア・マインドセット
● 割り切る・受け流す力
理不尽や不条理は個人の力ではそう簡単に変えられないことも多いです。そのため、ときには「受け流す」「割り切る」といった心理的スキルが求められます。もちろん無理やり我慢し続けるとストレスが蓄積するため、自分が気持ちを切り替えられる方法(運動・趣味・家族や友人とのコミュニケーションなど)を確保することが重要です。
● メンタルヘルスへの配慮
組織の不条理に振り回されて、知らず知らずのうちにメンタルヘルスが悪化してしまうケースもあります。疲れが取れない、気分の落ち込みが続くなどのサインを感じたら、早めに休暇を取得したり、医療機関やカウンセラーに相談するなど、自分を守る行動を優先しましょう。
まとめ
- コントロール可能な範囲を見極める
不条理な環境すべてを変えようとせず、まずは自分の権限・影響力が及ぶ範囲に注力する。 - 情報収集とコミュニケーション
背景や意図を知るための情報収集を行い、疑問点や提案を建設的に伝える。 - サポート体制の活用
同僚や社内外の相談先を活用し、孤立せずに状況を整理する。 - キャリアビジョンの再考
長期的に見て今の組織環境との付き合い方や、転職・異動なども含めた選択肢を検討する。 - メンタルヘルスを重視
割り切りや受け流しの技術を身につけつつ、ストレスが過度にならないよう自己防衛策も講じる。
組織の不条理は、どの組織でも少なからず存在するものです。だからこそ、自分の中で「納得できないことを抱えながら、どう折り合いをつけるか」「どう行動や環境を変えるか」という判断が必要になります。自分自身に無理を強いすぎず、情報や周囲のサポートをうまく活用しながら行動を計画・実行してみてください。
自分の健康を最優先に考えよう
組織の不条理に対応するうえで、最も大切なのは 自分の健康を守ること です。精神的ストレスが続くと、知らず知らずのうちに身体にも影響が出ることがあります。睡眠不足、食欲不振、慢性的な疲労感などのサインを感じたら、まずは健康を優先し、無理をしすぎないようにしましょう。
運動を取り入れることでリフレッシュ
辛いときほど 意識的に運動を取り入れること が大切です。軽いウォーキングやストレッチでも構いません。身体を動かすことで気分転換になり、ストレス軽減や思考の整理にもつながります。また、定期的な運動は睡眠の質を向上させ、長期的に心身の健康を保つのに役立ちます。
「今できること」に集中する
不条理な状況に直面したとき、すぐに解決できないことにとらわれすぎると、精神的な負担が増えてしまいます。そのようなときは、「今の自分ができることに集中する」というマインドセットを持つことが有効です。小さな行動の積み重ねが、状況を少しずつ改善するきっかけになることもあります。
組織の理不尽さに対処するためには、 自分を守ることを最優先 にしながら、適切な対処法を選択することが重要です。