2025年9月19日に公開した劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が、初日から驚異的な記録を打ち立てるなど、大きな話題を呼んでいます。
筆者も早速映画館に足を運んできました。レゼの魅力を最大限に引き出した作品に仕上がっており、ファンとしても大満足の上がりでした。
今回は、映画公開に合わせて発表された2本のスペシャルYouTube動画をご紹介します。
①「映画『チェンソーマン レゼ篇』公開記念 キャスト登壇イベント スペシャルトークまとめ」
主人公デンジ役の戸谷菊之介さんをはじめ、上田麗奈さん(レゼ役)、内田真礼さん(天使の悪魔役)、高橋李依さん(東山コベニ役)といった豪華キャスト陣が登壇し、それぞれの役どころや作品への思いを語っています。公開2日目に、全国の劇場で生中継された動画です。
②「映画『チェンソーマン レゼ篇』公開記念 クリエイター対談スペシャルトークまとめ」
原作者の藤本タツキ先生と主題歌を担当した米津玄師さんによる、奇跡の初対談が実現。お互いの作品に対するリスペクトや、創作のルーツに迫る貴重な内容が収められています。
今回は、数ある裏話の中から、上田麗奈さんが演じるレゼ像が物語に与える深み、そして米津玄師さんと藤本タツキ先生という二人の天才を繋ぐ意外な共通点という二点に焦点を当ててご紹介します。これらの情報に触れることで、作品への理解がさらに深まり、もう一度劇場へ足を運びたくなるはずです。
上田麗奈が演じ分けた「3人目のレゼ」が物語に与える深み

(画像)上田麗奈オフィシャルサイトより
レゼというキャラクターは、『チェンソーマン』の中でも特に多層的な魅力を持つ存在です。デンジの心を揺さぶり、翻弄しながらも、彼女自身の秘めた悲劇性が多くのファンを惹きつけます。このレゼに、声優・上田麗奈さんが息を吹き込んだことで、キャラクターは想像を超える深みと複雑性を獲得しました。
キャスト登壇イベント動画の中で上田さんは、自身が演じたのは「レゼ」と「ボム」という二つの側面だけでなく、その根底に存在する「3人目の人格」だったと語っています。彼女が意識して演じ分けた3つのペルソナは、以下の通りです。
- レゼ: デンジを恋に落とすことを目的とした、魅力的で親しみやすい少女。カフェで無邪気に笑い、プールで共に遊び、青春の一コマを演じる仮面。
- ボム: 「心を奪う」ことから、物理的に「心臓を奪う」ことへと目的が切り替わり、感情を排したクールで任務に忠実な兵器としての存在。目的達成のためには非情になれる、冷徹な一面。
- 彼女: 上記の「レゼ」でも「ボム」でもない、二つの仮面の奥にいる、核となる本来の人物。誰にも見せてこなかった、あるいは見せることを許されなかった彼女自身の「本質」。
上田さんは、この「3人目の彼女」が劇中の様々な瞬間にふと顔を覗かせると語り、ぜひ観客に見つけてほしいと願っています。
この「3人目のレゼ」という解釈こそが、物語に計り知れない深みを与えます。
もしレゼが単なる「デンジを騙すための少女」と「冷酷な兵器」の二面性だけで構成されていたら、彼女の行動や選択はより単純に映ったかもしれません。しかし、「3人目の彼女」が存在するという示唆は、レゼがその二つの仮面の下で、どんな感情を抱き、何を考え、何に苦しんでいたのかという想像の余地を大きく広げます。
例えば、デンジとの束の間の平和な時間の中で、彼女がふと見せる寂しげな表情や、爆弾の悪魔としての任務を遂行する中で垣間見せる葛藤。これらは、「3人目の彼女」が表面に現れようとする瞬間、あるいはその抑圧された本心が漏れ出た瞬間と解釈できるでしょう。それは、レゼが単なる悪役でも、単なる被害者でもない、人間らしい複雑な感情と内面の葛藤を持つ存在であることを示唆します。
上田麗奈さんのこの深い役作りによって、観客はレゼの微細な表情の変化や声のトーンの揺らぎに、より一層注目することになります。彼女がデンジに見せた笑顔は本当に偽りだけだったのか? 最後の別れのシーンで、彼女の心にはどんな思いが去来していたのか? 「3人目のレゼ」の存在を知ることで、私たちはスクリーンの中のレゼの行動一つ一つに、より深く感情移入し、その悲劇性や人間性に心を揺さぶられるのです。彼女の演技は、レゼというキャラクターを単なる物語の装置ではなく、生身の人間として捉え直させる、まさに「深み」を生み出すものです。
藤本タツキと米津玄師、二人の天才を繋ぐ意外な共通点

(画像)米津玄師オフィシャルサイトより
原作者の藤本タツキ先生と主題歌を担当した米津玄師さん。日本のエンターテイメント界を牽引する二人の天才が、今回が初対面だったという事実に驚く方も少なくないでしょう。しかし、クリエイター対談動画の中で明かされたのは、二人が想像以上に深く共鳴し合う存在であるということでした。
対談を通じて明らかになったのは、二人が同じ時代に育ち、膨大な「文化的DNA」を共有しているという事実です。具体的には、彼らが少年時代や思春期に浴びるように摂取してきたカルチャーに、驚くほどの共通点があったのです。
- 『NARUTO』の熱心な読者だったこと。
- 『モンスターファーム2』や『遊戯王』といったゲームに夢中になったこと。
- 創作の原点が、お絵かき掲示板やFlashアニメといった黎明期のインターネット文化にあること。
- 若き日のエンターテイメントの中心がニコニコ動画だったこと。
これらの共通点は、単なる偶然の一致ではありません。90年代後半から2000年代にかけて、これらのカルチャーは多くの若者にとって、自分を表現する手段であり、無限のインスピレーションの源でした。まだインターネットが今ほど洗練されていなかった時代に、自分たちの手で「面白いもの」を作り出し、発表し、評価し合う。そんな熱量を、二人は共に体験してきたのです。
米津玄師さんが「自分も負けられない」と競争心を燃やしたと語るように、同じ文化的土壌で育ったクリエイターが、これほどまでに衝撃的で革新的な作品を生み出していることに、強い刺激を受けたのでしょう。それは、単なるリスペクトを超え、同じ感性を持つ者同士が互いの存在を認め合い、さらに高め合おうとする「共鳴」と呼ぶべきものです。
この共通の文化的DNAは、二人の創作物にも深く影響を与えています。例えば、『チェンソーマン』の持つ予測不能な展開や、時にシュールで、時に痛烈なユーモアは、Flashアニメやニコニコ動画の実験的な表現に通じるものがあります。一方、米津玄師さんの楽曲も、ポップでありながら実験的で、心に深く響くリリックは、混沌としたインターネットの海で培われた感受性から生まれていると言えるでしょう。
今回のコラボレーションは、単なるビジネス上のビッグプロジェクトという枠を超え、同じ時代を駆け抜け、同じ「面白さ」の原体験を持つ二人の天才が、互いの創造性を刺激し合い、一つの作品へと昇華させた奇跡的な出会いだったのです。彼らの作品に共通する、どこか懐かしくも新しい感覚、そして根源的な「面白さ」への探求は、まさにこの共通の文化的ルーツから生まれていると言えるでしょう。
まとめ:二つの視点から『レゼ篇』を再発見する
上田麗奈さんがレゼに与えた「3人目の人格」という深み、そして藤本タツキ先生と米津玄師さんを繋ぐ共通の文化的DNA。これらは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が単なるアクション映画に留まらない、多層的な魅力を持つ作品であることを物語っています。
レゼの表情の裏に隠された真の感情を想像し、デンジとの関係性における彼女の葛藤に思いを馳せること。そして、二人のクリエイターがどのようにしてこの作品に命を吹き込んだのか、そのルーツと共鳴の物語を知ること。これらの視点を持つことで、一度観た方も、これから観る方も、きっと新たな発見と感動を味わえるはずです。
ぜひ、今回ご紹介した内容を頭の片隅に置きながら、元になったYouTube動画をご覧になり、そして劇場へと足を運んでみてください。きっと、これまでとは全く違う、深く豊かな『チェンソーマン レゼ篇』の世界があなたを待っているはずです。
【元になったYouTube動画はこちら】
映画『チェンソーマン レゼ篇』公開記念 クリエイター対談スペシャルトークまとめ https://youtu.be/RnodCcpq8ZI?list=TLGGXxiIN_I9eBgyNzA5MjAyNQ
映画『チェンソーマン レゼ篇』公開記念 キャスト登壇イベント スペシャルトークまとめ https://youtu.be/woKwSDFzjng?list=TLGGf1XQLF2UQbsyNzA5MjAyNQ
追加:“デンジ”戸谷菊之介&“マキマ”楠木ともり、お気に入りのセリフを披露!藤本タツキ氏に聞きたいこととは? 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』インタビュー
このインタビュー動画は、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の魅力を、主要キャストである戸谷菊之介さん(デンジ役)と楠木ともりさん(マキマ役)の視点から深く掘り下げています。キャラクターへの深い愛情とお気に入りのセリフの解説を通じて、作品への期待感を高めるとともに、原作者・藤本タツキ先生へのリスペクトと、作品の根源に迫りたいというクリエイターとしての純粋な探求心も垣間見える内容となっています。